喘息

 

 

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鍼灸治療でつらい発作を未然に防ぎます

喘息は、気管の平滑筋のけいれんや気管粘膜の充血、粘液分泌の増加などで気道が狭くなって起きる病気です。咳や痰がひっきりなしに出て、ゼェゼェ、ヒュウヒュウという喘鳴が続き、ひどいときには呼吸困難に至ります。季節の変わり目など寒暖の差が大きいとき、風邪を引いたときなどに起こりやすく、タバコの煙や花粉、ダニ、ペットの毛などのアレルゲンが引き金になって発症することもあります。中国や日本における最近の臨床研究で、鍼灸治療の有効性が証明されてきました。

当院では、鍼・電気鍼・灸・吸い玉などを使って総合的な治療に取り組んでいます。

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現代病としての喘息

喘息の発作は繰り返し起きることが多く、 気道が狭くなることによって、喘鳴、咳痰、息苦しさ、呼吸困難などの症状が出ます。厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、喘息による通院患者率(人口千人当)は、1986年には15歳未満の子どもで1.6%、15歳〜64歳で3%、65歳以上の高齢者で4.3%でした。

それが最新の2006年の調査では、15歳未満で3%、15〜24歳が3.9%、65歳以上で6.1%といずれも増えています。家屋の建設方法に由来する、いわゆるシックハウス症候群で、アレルゲンが増えている可能性もあります。いずれにせよ喘息は患者数が増え続けている「現代病」といっても過言ではありません。幸い喘息の死亡者数は減っていますが、死亡者のおよそ半数は重度の症状を軽くみて治療が遅れたのが原因だといわれています。

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喘息の治療

喘息には急性発作期と緩解期があります。急性発作期にはステロイドの吸入など西洋薬による治療が有効です。一方、緩解期には、予防的治療が大切です。そこで大きな役割を果たすのが鍼灸や漢方薬などの東洋(中国)医学です。 中国では古来、鍼灸による喘息の治療が広く行われてきました。12世紀に南宋の人、王執中が著した「鍼灸資生経」をはじめ、16世紀の「鍼灸聚英」、17世紀初頭の「鍼灸大成」など多くの古典医書に鍼灸による喘息治療の記述があります。鍼治療で自律神経(迷走神経)のバランスを調節して免疫力を高め、肺や気管の機能を整えるのが古くからの中国医学の治療法です。さらに、中国には「冬病夏治」という習慣があります。喘息は寒い季節、特に季節の変わり目に発症することが多いため、夏のあいだに鍼灸治療をすることで冬の病気に備えるのです。現代風に言えば「予防治療」ですね。

最近では、鍼灸による喘息治療の効果を調査した臨床研究報告が相次いでいます。例えば南京中医薬大学で2017年7月発表された報告によれば、小児喘息急性発作の患者に対して肺兪穴というツボに灸治療を行なった結果、97%の有効率を示したとしています。また、日本では2011年に明治国際医療大学で行われた臨床研究において、鍼治療に気道閉塞の緩和効果が認められたとするものなどがあります。

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健身院の喘息治療

健身院では、喘息の患者様に対して、鍼・電気鍼・灸・吸い玉などを組み合わせた総合的な治療に取り組んでいます。喘息が疑われる患者様の場合、まず中国医学でいう「弁証」の原則に従い、症状が「実証」か「虚証」かを判別します。

●実証

咳、呼吸が早い、ゼェゼェと息苦しい、発熱悪寒、頭痛、喉が乾く、便秘、痰の色は薄白色あるいは黄色、など。

●虚証

咳、呼吸が短く早い、ヒュウヒュウ、喘鳴が低い、呼気が多く吸気は少ない、めまいと耳鳴り、四肢が冷たく寒がるなど。

発作が激しく起きている急性期は実症が多いのですが、緩解期には虚症が主となります。急性期においては、何より迅速に喘息の発作を緩解することが第一で、当院では鍼と吸い玉療法を組み合わせて発作の軽減を図ります。とはいえ実際には、当院においでになる喘息の患者様の大半は緩解期の方で、鍼灸の本領を発揮できるのもこうした緩解期の患者様に対してと言っていいでしょう。喘息の急性期においては薬物療法、特に吸入薬が抜群の効果を発揮しますので、急性期においては病院で治療を受け、症状が落ち着いたら鍼灸で体質改善を図り、再発を予防するのが一番いいと思います。

喘息の緩解期における鍼灸治療は週2〜3回のペースで行います。一人一人の患者様の症状に合わせて、最適な治療を組み合わせて施術しております。

治療実例─1

患者36歳女性(家事手伝い)

病名喘息

症状子どもの頃から喘息が持病で、大人になってからも夏冬を問わず、体が冷えると咳がひどくなりました。ステロイド吸入剤が手放せません。

一週間前風邪を引いたのがきっかけで、喘息を起こしました。薬の服用や吸入剤で症状は改善したものの、咳や痰は完全には消えませんでした。ときどき呼吸時にヒュウヒュウと音がして、息苦しくなるといいます。中国鍼灸で体質を改善し、喘息を治したいと思って来院したというお話でした。

治療経過:さっそく診察をしてみると、咳が絶え間なく、呼吸音は少しヒュウヒュウといっています。痰は薄くて白く、体は少し痩せ気味で、疲れている様子が見えました。また手足が冷たく、舌の色が淡紅、舌の苔は薄白滑潤で脈沈は細く弱いのも判りました。こうした徴候から、中国では「風寒外襲」と呼ぶ喘息緩解期だと判断、鍼灸を中心とした治療方針を立てました。治療に使うツボは、取清喘穴、肺兪、大椎、風門、風池、尺沢など。鍼を刺した後、そのまま20分置き、その後に肺兪に灸をします。1回目の治療の後、ヒュウヒュウという音がしなくなり、呼吸が楽になったといいます。日に1回の治療を連続10回続けたところ、咳と痰もなくなりました。その後の3日間治療を休んでから、一日置きの治療を15回続けました。この患者様の場合、鍼灸治療のあいだに喘息の発作が起きることはなく、それも幸いしてか手足の冷えが改善し、 体が以前より温かく感じられ、食欲も戻ってきました。以降はおおむね1週間に1回の割で鍼灸治療を受けに通っていらっしゃいます。すでに当院においでになってから半年が過ぎましたが、喘息の発作は再発していません。