長期にわたる継続的な鍼治療が必要です
統合失調症は心の病のひとつです。脳内の神経伝達物質の異常が原因で起こり、有病率はおおむね0.5〜2%と決して珍しい病気ではありません。
この病気の特徴は、症状が出ていないときには健康な人たちと何ら変わりがないことです。日常生活に支障を生じる危険があるにも拘わらず、発見が遅れがちになるのはそのためです。統合失調症と鍼治療は結びつきにくいかもしれませんが、WHO(世界保健機関)では鍼灸治療の効果を認めています。

統合失調症の症状
統合失調症は初期症状が多彩であり、発病の仕方も人によって違うのが特徴です。一般的には、緩慢に症状が出てくるケースが多いようです。患者の精神活動が活発さを失い、言葉が少なくなるなど、徐々に性格が変わっていきます。現実離れした幻想に夢中になったり、自語自笑、あるいは無闇に恐怖を感じる等の症状が現れます。不眠や頭痛を伴うことが多く、疲れやすくなり、集中力が低下、勉強や仕事の成績が落ちてくるなどします。こうした初期症状が数週間から長い場合は1年余りにわたって持続します。
統合失調症の症状には大きく分けて次の3種類があります。
・陽性症状(非欠陥症状)
・陰性症状(欠陥症状)
・認知障害
「陽性症状」には、妄想や幻覚、思考障害、奇異な行動などが挙げられます。「妄想」には被害妄想や関係妄想があり、「幻覚」には、存在しないものが見える「幻視」、音がしないのに音が聞こえる「幻聴」などがあります。
「思考障害」とは思考が一貫性を失い支離減裂になる状態で、話にとりとめがなく、話題が次々に変わるなどして、意味不明の会話になってしまいます。
それに対して「陰性症状」とは、従来持っていた性質や能力が失われることをいいます。感情麻鈍、快楽の消失、社会性の喪失などがあります。
「認知障害」とは、集中力や記憶力、整理能力などに問題がある状態をいいます。
3種類の症状すべてに該当する人もいれば、1〜2種類の症状だけが現れる人もいます。
西洋医学の統合失調症治療
西洋医学の統合失調症治療は、抗精神病薬の投与と心理療法が柱です。抗精神病薬には妄想、幻覚、思考の混乱等の症状を軽減する効果があります。また、急性の症状が収まった後に抗精神病薬を継続的に使用することで、再発の可能性を抑えることもできます。 しかし、残念ながら、抗精神病薬には筋肉の硬直や震え、体重の急激な増加などの副作用が知られています。抗精神病薬を長期に使用する場合には、肝機能や造血機能を定期的に検査する必要があります。
中国医学の考え方
中国医学では統合失調症は「癲狂証」に分類されます。「癲証」とは抑鬱状態や痴呆状態、突然泣いたり笑ったりするなどの症状をいう言葉です。一方、「狂証」は狂躁状態、奇声をあげたり怒りっぽくなるなどの症状をいいます。この二つの病証は交互に出現したり、また相互に転化したりもするので、臨床上は「癲狂証」と一括して呼びます。
健身院の統合失調症鍼治療
当院の治療原則は「開鬱化痰」と「定志安神」です。体中をめぐって必要な潤いを補う水が、いったん滞ると体にとって有害な「痰湿」に変化します。鍼治療で体内に溜まった痰湿を溶かし、 「鬱気を開通」(憂鬱を払うこと)するのが「開鬱化痰」です。一方の「定志安神」は、鍼の刺激によって気分を落ち着かせることをいいます。
健身院では、統合失調症の治療に使われる一般的なツボに加えて、癲証には心兪、厥陰兪、脾兪、狂証には少商、隠白、労宮、太衝など、症状に応じて適切なツボを組み合わせて治療しています。また、鍼に電気的なパルスを流すのが当院の治療の特徴で、主に頭部や顔面にあるツボに使います。こうした電気パルスの活用には、どの程度の刺激を与えるのか適切に判断することが重要です。
鍼治療を始めるときのアドバイス
1.鍼灸は統合失調症治療に効果的ですが、必要があれば漢方薬の服用や、薬物療法との併用を考慮すべきです。
2.一般的に急性の患者様ほど高い治療効果が期待できます。とはいえ、効果の安定を図るためには、長期にわたる継続的な治療が必要です。
3.患者様によっては、発作の前に不眠や情緒不安定など前駆症状が現れます。適時的かつ迅速な治療を行なうことで、再発を防止することができます。