橈(とう)骨神経麻痺

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症状を自覚したら一週間以内の受診を

鍼で治療することが多い疾患のひとつです。腕の働きを支配する神経は、橈骨神経、正中神経、尺骨神経の三つ。橈骨神経麻痺とは、そのうち橈骨神経の支配する領域が麻痺を起こした状態をいいます。橈骨神経の働きは肘を伸縮し、手首と指を伸ばすことで、それらの機能に麻痺が生じると手首に力が入らなくなってしまいます。腕の麻痺を訴える患者様のほとんどが診察してみるとこの橈骨神経麻痺です。時間が経てば経つほど治りにくくなるので、発症から一週間以内の治療をお勧めします。

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橈骨神経麻痺の症状

橈骨神経麻痺に罹ると、手首に力が入らなくなってだらんと垂れ下がってしまいます。この症状を「下垂手」といいます。手首を持ち上げる力が著しく弱くなるため、軽いものでも持ち上げられなくなります。また指先に力が入らなくなって、指が伸びなくなり、ペンを持つのも不自由で字がうまく書けなくなってしまいます。そのほか、手の平をパーの形に広げられない、指を別々に動かせない、腕のだるさや痛み、むくみ等がよく見られる症状です。

麻痺が長く続くと、筋肉の萎縮が起こって、腕の筋肉が痩せて細くなってきます。中等症以上の麻痺であれば、ある程度の筋萎縮は避けられませんが、鍼治療によって、麻痺とともに筋萎縮も回復していきます。なお、脳梗塞ではないかと心配して当院を受診される方もいらっしゃいますが、橈骨神経麻痺は手首から指にかけての麻痺、しびれが主な症状であり、体の半身に麻痺が出ることはありません。

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橈骨神経麻痺の評価と治療

麻痺の程度は筋力テストを行なって6段階で評価します。2以下のレベルであれば治療が必要です。

⑤ 強い抵抗に逆らって完全に運動ができる

④ 若干の抵抗に逆らって運動ができる

③ 重力に抗して運動ができる

② 重力を除かないと完全な運動ができない

① 筋肉は僅かに収縮するが関節が動かない

⓪筋収縮もしない状態

以下は治療に要する時間の目安です。

麻痺レベル・2   1回〜1ヶ月前後

麻痺レベル・1   1ヶ月〜2ヶ月前後

麻痺レベル・0   2ヶ月以上

橈骨神経麻痺には特効薬がありません。病院に行っても、処方されるのはビタミン剤程度です。軽度であれば自然に治る場合もありますが、それでも一ヶ月前後はかかり、生活に支障が出てきます。末梢性の橈骨神経麻痺は一時的に神経が麻痺した状態ですので、麻痺を一刻も早く解消することが大切です。時間が経てば経つほど治りにくくなるので、しばらくは様子をみるにしても、1週間ぐらいにとどめておくのが無難です。特に職業上、手を酷使する患者様(音楽家や画家、作家、調理師、工芸職人など)は、すぐに治療にかかられるようお勧めします。

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健身院での治療実例

当院では一人一人の患者様の症状に合わせ、最も適切なツボや治療法を選んで治療します。どうぞお気軽にご相談ください。

治療実例─1

患者【43才・男性 音楽家】

病名橈骨神経麻痺

症状来院の二日前に深酒をして、左肘を下にしてそのまま寝てしまいました。翌朝、目が覚めると、左手の手首をあげる力がなく、手首が垂れた状態になっていました。

診察と治療経過:診察の結果、麻痺レベルは2。一回目の治療を終えた直後には、あまり症状は改善していませんでした。それが翌日いらっしゃった時には手首に少し力が入るようになっており、三日目には五本の指にも少し力が入るようになりました。四回の治療で全快しました。この患者様の場合、 麻痺レベルが2と軽かったため、比較的順調に回復しました。

治療実例─2

患者【56歳・女性】

病名橈骨神経麻痺

症状最初に症状が出てから、およそ一ヶ月たっての御来院でした。そのときには手首が全く曲がらず、 (橈骨神経が支配している)親指、人差し指は動かない状態でした。 感覚が麻痺しているので、痛みは感じないというお話です。

診断と治療経過: 初日の鍼治療で手首がほんの少しだけ曲がるようになりました。 2回目ではもう少し曲がり、3回目でおよそ45度まで曲がりました。 治療を始めて4日目のことで、ここまで早くよくなるとは思わなかったと、患者様に大変喜んでいただきました。さらに治療を続けると、指も少しずつ動くようになっていきました。8回目の治療で人差し指が上にあがるようになり、 麻痺が残るのは親指だけになりました。12回目の治療で指の麻痺が完全に消え、感覚も戻り、全快の日が近づいています。