鍼灸というと腰痛や肩こり、筋肉痛などを治療するものというイメージが強いと思いますが、何度も書くように中国では「医療」であり、様々な内臓疾患や神経症などの治療に日常的に使われています。きょうは特に内臓疾患に及ぼす鍼治療の効果について書いてみたいと思います。
ふだん腰痛や背痛を訴えて健身院においでになる患者様を治療していて、腰や背中に鍼を打つとグルグルと音を立てて胃腸が動き出すのがわかることがあります。患者様のなかには、鍼を打ったらお腹が減ってきたとおっしゃる方もいらっしゃいます。
これは腰の筋肉の過度の緊張が原因で胃腸の動きが鈍くなっていたり、逆に胃腸の不調が腰の張りという形で現れていたりすることを意味しています。鍼で刺激をすることによって、内臓の動きが活性化されて症状が緩和するわけです。
腰痛や背痛の場合だけではありません。胃の不調を訴えて来院された患者様には、例えば「足三里」というスネにあるツボに鍼を打つと胃液の分泌が促進されます。また、お腹にあるツボに直接鍼を打って刺激を与える方法もあり、電気パルスで刺激を強めることもできます。これは、便秘や下痢、食欲不振などの症状があるときの治療法で、中脘や関元などのツボを使います。
中脘はみぞおちと臍を結ぶ線の中間にあり、ちょうど胃のところに当ります。関元は下腹部にあるツボで小腸の働きを活性化するのに効果があります。武道の世界では「丹田」と呼ばれ、精神集中のため丹田に力を込めることが大切だと教えられるようですね。また生理痛や生理不順、更年期障害に効果があるツボとしても知られています。
こうした鍼刺激による内臓機能の活性化は、近年は抗がん剤や放射線治療の副作用を緩和する方法として世界的に注目されています。
当院では開院以来、慢性前立腺炎の治療に力を入れており、朱院長が大変多くの患者様を診てきました。慢性前立腺炎の治療も関元や、やはり下腹部にある前立腺穴、気海などに鍼を打ちます。肩こりや腰痛にとどまらない鍼の治療効果、特に胃腸など内臓機能の活性化には即効性がありますので、みなさまちょっと驚かれるかもしれません。これから食欲の秋などで胃腸の不調を訴える方が多くなる季節です。お腹の調子が悪いなと思ったときはお早めに当院にご相談ください。