橈骨神経麻痺の鍼治療例

橈骨(とうこつ)とは、肘と手首をつなぐ2本の骨のうち、親指側にある骨のことをいいます。骨折や不自然な姿勢でのうたた寝によって、この橈骨に沿って走る神経に異常をきたすのが橈骨神経麻痺です。典型的な症状は、手首に力が入らなくなって腕がだらんと垂れてしまい、指を伸ばせなくなるというものです。 

きょうは完治したはずの橈骨神経麻痺が逆の腕に再発した患者さんのケースをご紹介しましょう。 
当初の発症は二年前で、左の腕でした。発症してから一ヶ月後に当院にみえました。 症状がなかなか改善せず、仕事や日常生活に不便をきたすということで、鍼による治療をご希望でした。

 

この方の場合は1回目から治療の効果が現われ始め、6目で手首が上がるようになり、13回、一ヶ月ほどの治療で完治しました。ところが、今度は右腕に症状が出たのです。手を握ると手首を水平まで持ち上げることができない状態で、前回の経験もあるので、発症の翌日、すぐに当院に鍼治療にいらっしゃいました。両手が橈骨神経麻痺になることは稀ですが、この方はお酒が好きで、酔ってよくうたた寝をするそうです。腕枕など長時間無理な姿勢をとると橈骨神経を圧迫してしまいます。 

治療方針は経絡と気血の流れをよくすることを最優先に考えました。しかし、最初の2回は、症状にさほどの変化は見られませんでした。そこで3回目からはツボを変え、「合谷」と「外関」というツボを組み合わせて治療することにしました。3回目の治療終わったところで、手首を少し上げることができるようになりました。6回目の治療で手首を40度ほど曲げられるまでに改善し、11回の治療で完治しました。治療期間は今回もおよそ一ヶ月でした。 

橈骨神経麻痺を予防するには、酒に酔って腕枕で眠るなど長時間無理な姿勢をとることを避ける必要があります。鍼治療によって比較的短い期間で治すことができる病気ですが、回復が遅いと日常生活に不便をきたすことになりかねません。異常を感じたらお早めにご相談ください。