夏の終わり頃、季節の変わり目にまた、顔面麻痺が増えるものです。今日は去年の9月上旬にいらした患者様の症例をご紹介したいと思います。
患者様:40代男性
症 状:左顔面神経麻痺初めて来院されたときは、左の目を全く閉じることができない状態でした。右の目が普通ですが、左目は涙目になっています。麻痺のある左側の筋肉が健康な右側に引っ張られるため、左の口の角がたれ下がっていました。
ある朝起きると、顔の左半分が動かないことに気がついたのだそうです。水を飲んでも口の端から零れ落ちてしまいます。
さっそく病院に行くと「顔面神経麻痺」と診断され、すぐに入院することになりました。病院での治療は主としてステロイド剤の点滴だったようです。入院中にインターネットで鍼治療が有効と知り、病院から抜け出して当院にきたというお話でした。
仕事はデスクワークとのことで、溜まりに溜まったストレスが引き金となって、顔面神経麻痺を発症したようです。病院での治療と鍼治療を並行して受診したいとの意向で、入院中の病院を毎日抜け出して当院に通われました。
この病気を中国医学では「口眼歪斜病」と呼びます。文字通り口や目が歪む病気で、疲れが溜まっているときに冷たい風などの邪気(悪い気)に侵されると、気血不和(体内を巡る気と血液の流れが滞る状態)になり、発症すると考えられています。
治療としては、「地倉」と頬車、「陽白」と「魚腰」などのツボに透刺鍼を打つことによって主に体内の邪気を取り除き、血流をよくすることで、詰まった経絡(気の通り道)を開きます。
この患者さんの場合、病院を退院後も当院での治療を継続し、3回目の治療あたりから顔の筋肉を多少動かせるようになるなど徐々に変化が現れ始めました。7回目の治療が終わった後、10日間の出張がありました。その後の治療で、疲れからか症状が一時的に戻ったように感じましたが、その後、目を閉じることができ、額に皺を寄せる動きもできるようになりました。また、口元を丸めることもできるようになり、めでたく完治しました。