うつ病に対する鍼治療の効果について

現在、うつ病に対する鍼治療の効果について、世界規模で鍼灸研究が進められています。特に、西洋医学の基準に基づいた臨床試験が活発に行われています。WHO(世界保健機関)も、うつ病に対する鍼治療の効果を認めています。当院でも、24年前の開院以来、うつ病の治療に取り組んできました。

 

世界中の医学的な臨床試験を網羅した「コクラン共同計画」のライブラリーには、西洋医学の臨床試験のレポートが大部分を占めていますが、鍼灸に関する実証的な研究論文も含まれています。うつ病に対する鍼治療の効果を調べた論文は700本以上存在します。

 

例えば、2010年にスミスさんとマクファースンさんらが発表した論文では、抗うつ薬と鍼治療を組み合わせると、抗うつ薬単独の治療よりも症状が改善することが報告されています。また、当院で行っているような鍼に通電する治療と新規抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を組み合わせた場合、SSRI単独の治療に比べて明らかに症状が改善することが示されています。西洋医学の薬物療法と東洋医学の鍼を組み合わせることで、より高い治療効果が期待できるとされています。

 

さらに、2003年にチャン(張)さんが発表した論文では、頭のてっぺんにある「百会」や眉間にある「印堂」というツボを中心に、いくつかの追加的なツボを合わせて電気鍼による治療を行ったところ、新規抗うつ薬(SSRI)による治療に比べて症状の軽減に役立ったとされています。

 

こうした臨床試験による鍼灸効果の研究はまだ充分とは言えなうつ病に対する鍼治療の効果につい言えないものの、うつ病に限らず、西洋医学と鍼を組み合わせることで効果的だとするものが少なくありません。病院と連携した治療システムの構築など、現状では課題もありますが、これらの研究成果をできるだけ当院の治療に活用していきたいと考えています。