頭痛

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中国伝統鍼灸術は頭痛に極めて有効です

みなさんは「頭痛」を御存知ですか?一言で「頭痛」といっても実はいろいろなタイプあって、それによって治療法も違います。古代中国の医書『素問・風論篇』には“脳風”“首風”との言葉があり、外風、風寒の気が頭(脳)を侵襲して頭痛が起こるとしています。また『丹溪心法·頭痛』では、頭痛は痰厥、気滞に関係するとあります。このように様々な原因で起こり、病状がかなり複雑なのが頭痛です。。

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原発性頭痛と続発性頭痛

現代医学では、頭痛を原発性(突発性)と続発性の二つに分けています。原発性頭痛のなかでもよく見られるのは偏頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛で、頭痛の患者様のおよそ9割はこうした原発性の頭痛です。続発性頭痛は、他の病気が原因で頭痛が起きている状態を言います。例えば脳血管疾病であったり、頭蓋内感染、頭蓋外傷、脳腫瘍、高血圧、薬物などによる頭痛です。ここでは主に3種類の原発性頭痛(偏頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛)について、当院の考え方や鍼灸による治療法を説明することにします。

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健身院の頭痛診断

頭痛を訴える患者様が当院にいらっしゃった場合、私たちはまず弁病と弁証、弁経という中国の伝統的な診断法を用いて患者様の頭痛の性質を分析します。以下に具体的に述べますが、正確に病状を把握することは、脳腫瘍などが原因で起きる頭痛の患者様を見極めるのにも重要です。

【弁病】

私たち健身院のスタッフは、30年前後の臨床キャリアがあります。そうした経験を活かして、まず望診、聞診、問診、切診の中国医学でいう「四診」を行ないます。このなかでも特に患者様のお話をうかがう問診が重要で、頭痛の発生時期や発作の頻度、持続時間、頭痛の部位、性質、痛みの強さ、頭痛が起きるきっかけの有無、前駆症状、どんなときに痛みが強くなり、また軽くなるのかを聞きます。また患者様の睡眠の状態、職業、既往歴、持病や外傷の有無、いま飲んでいる薬、家族歴を聞くのも重要です。これらの情報が頭痛とどう関係しているかを分析し、原発性頭痛か続発性頭痛かを判断します。

○偏頭痛

偏頭痛の場合は、頭の片側(ときに両側)がずきずきし、がんがんと金槌で殴られたような痛みを感じます。吐き気を伴うほどの頭痛が一定の間隔で繰り返すのが特徴です。月に1~2回、多いときには週に2~3回、発作的に強い頭痛が起こります。体を動かすと痛みがひどくなり、悪心・嘔吐を伴うことも少なくありません。また、音や光に対して敏感になります。20~40代の女性に多く見られる頭痛です。

○群発性頭痛

激しい痛みが片側の目の奥に起こります。「目の奥をえぐられるようだ」と形容される激しい痛みが特徴です。涙が出て、目が充血し、鼻水が止まらないなどの症状を伴います。多くの場合、年に1~2回、1~2ヶ月にわたって、毎日のように激しい頭痛が繰り返し起こります。

○緊張型頭痛

肩や首筋の凝りとともに、頭が締め付けられるような痛みが出ます。毎日のように痛みますが、それほど強い痛みではなく、仕事や日常生活ができなくなることはまずありません。多くは精神的、あるいは肉体的なストレスが引き金となって起こります。

こうして弁病によってお客様の頭痛の種類を判別した後は弁証、弁経を行います。

【弁証】

頭痛は中国医学では外感頭痛と内傷頭痛とに分けられます。こうした病証の性質を中国医学の伝統に従って見極めるのが弁証です。

○外感性頭痛

日頃の不摂生などにより、風、寒、湿、熱の外邪が身体·頭部に侵入し、そのために頭部の経絡(気の通り道)が滞って気血の流れが悪くなったり、清陽の気が抑止されたりするのが原因で起きる頭痛です。侵入する外邪の種類によって風寒、風熱、風湿の三つタイプに分けられます。

○内傷性頭痛

内傷性の頭痛は肝・脾・腎の三臓と密接な関係があり、これらの臓の不全が原因となって起きます。内傷性頭痛は肝陽の亢進、痰濁、血瘀、気血両虚、腎虚による五つのタイプに分けることができます。

【弁経】

中国医学では、人体には「気」の通り道である経絡が走っていると考えます。この経絡は、主なものだけで陽明経、少陽経、太陽経など十二あるとされています。痛む場所の違いによってどの経絡に属している頭痛なのかを判断し、治療法を決めるのが弁経です。

○陽明頭痛

陽明経に属する頭痛で、痛みは前頭部、眼窩上部、鼻根部に現れます。

○少陽頭痛

少陽経の頭痛で、痛みは頭の側部に出ます。片側で起きることがが多いのですが、両側に起きることもあります。

○太陽頭痛

太陽経の頭痛は痛みが後頭部に現れます。首の後ろから僧帽筋のあたりまで痛くなるのが特徴です。

○厥陰頭痛

厥陰経に属する頭痛です。痛みは頭頂部に現れます。目の奥が痛むことがよくあるのも、この経の頭痛の特徴です。

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健身院の頭痛治療

頭痛に対する鍼灸治療の原則は、患者様の経絡を整え、気血の流れを改善して鎮痛を図ることにあります。上に述べた様々なタイプの頭痛には、それぞれによく効く特別のツボがあります。健身院では、中国伝統の鍼灸に最新の神経学の研究成果を導入した平衡鍼灸学を採り入れていますが、この平衡鍼灸学に特有の“頭痛穴”もよく使うツボのひとつです。その他、風寒頭痛には列缺、風池。風熱頭痛には曲池と大椎。風湿頭痛なら陰陵泉。偏頭痛の場合であれば、糸竹空、承泣、迎香などのツボを使うのが基本になります。また、頭痛の急性発作が起きているときと緩解期でも治療の方法が違ってきます。私たちは長年の経験を活かし、頭痛の患者様に対して経絡上のどこに鍼を打てばより有効かを探り当てます。同時に“上病下治”、“左病右治”などの治療方法を適宜採用し、一人一人の患者様に最適の治療ができるよう心がけています。

治療実例─1

患者58歳男性、会社員

病名偏頭痛にして少陽頭痛のケース

症状2日前突然、右側の頭に激しい痛み。痛みが徐々に強くなり耐えられない。

診断と治療経過:痛みは脈打つような激しい痛みで、イライラする、全身に疲労感。食欲がなく、夜も眠れないとのこと。自分で鎮痛剤を飲んだが、痛みは取れなかったといいます。診断したところ、肝陽の亢進が見られ、少陽経の流れが阻害されて起こる少陽頭痛で、弁病の結果は偏頭痛と判断しました。「平肝潜陽」「通経止痛」を治療方針とし、頭痛穴、風池、印堂、上星、阿是穴、足临泣、外関などのツボを使うことにしました。一回目の治療で痛みはすぐ治まりましたが、帰宅した後、夕方からまた痛くなってきたといいます。そこで翌日から二日連続の治療を行ない、全部で三回の治療で頭痛が出なくなりました。その後、この患者様は肩凝りや腰痛の治療で時々いらっしゃっていますが、半年以上経っても頭痛は再発していません。

治療実例─2

患者28歳女性、会社員。

病名緊張型頭痛にして太陽頭痛のケース

症状仕事のトラブルなどが重なり、睡眠時間が短い日が続いたところ頭痛がひどくなった。

頭痛が起き始めてから一週間、毎日頭痛薬を飲んで過ごしたそうです。肩凝りもひどく、時おり悪寒、頭がふらふらして感じられるとのことでした。問診の結果、この患者様の場合、特に痛む場所が後頭部で、首や肩、肩甲骨あたりまで凝りがあります。

診断と治療経過: 弁病で緊張型頭痛、弁証・弁経で瘀血型の太陽頭痛だと判断しました。治療方針は「活血化瘀」「行気止痛」で、阿是穴、後頂、天柱、曲垣,肩中兪、心兪、崑崙、合谷、三陰交などのツボを使います。一回目の治療が終わると同時に、嘘のように頭痛と肩凝りなどがなくなり、全身がほかほかと温かく、軽くなって、すっきりした気がするとのことでした。この患者様はその後も、軽い頭痛と首、肩の凝りを感じることはあったものの、一日置きに仕事帰りに治療を続けたところ、全部で五回の治療で全快しました。

 

続発性頭痛の場合であればまず原因疾患の治療が先決ですが、原発性頭痛に関しては鍼灸治療が非常に有効です。頭痛でお悩みの方はぜひ一度、健身院にご相談ください。