早いもので、
今年もすっかり押し詰まりましたね。 この一年、 多くの患者さんにおいでをいただきました。 皆様方の苦痛を和らげ、 より快適に過ごしていただくためのお手伝いができましたことを嬉しく思っております。 ちょっと固い話になりますが、 これから超高齢化社会を迎える日本では、 鍼灸など東洋医学と西洋医学との連携が重要になります。 しかし、最近、この業界で少し嫌な話を耳にすることもあります。 よその鍼灸院を批判するようなことはあまり言いたくないのですが、 当院の基本姿勢にも関わることであり、 少しだけ書かせていただくことにします。 ひとつは、治療に着手した後、 症状によって別料金を請求する鍼灸院があるという話です。 こうした営利主義的な経営方法が 鍼灸医療全体に対する不信感を招かないかと心配しています。 いまひとつは… 主人がお友だちから聞いたという話です。 そのお友だちは五十肩に悩み、 病院に行っても症状がよくならないため、 鍼灸医療を頼ることにしたといいます。 ネットで調べた結果、 スポーツ選手など有名人を患者に持つことで知られる、ある鍼灸院を訪ねたそうです。 ところが、そこでは、 ネットに出ていた先生が実際に治療に当たることはなく、 毎回、鍼を打つのはお弟子さんらしい若い人だったといいます。 何度治療を受けてもさほど症状が改善せず、 結局行くのをやめてしまい、 「鍼灸は効かない」という思いだけが残ったという話でした。 実際、 鍼灸の治療が充分な効果を上げるためには、 ある程度の回数、通院していただかなければならないことがあります。 多くの場合、 一度の治療でも症状は軽快しますが、 数日後には元に戻ってしまうケースが少なくありません。 まず当面の苦痛を和らげながら、 根本的な苦痛の原因を取り除くためには、 やはり治療の回数を積み重ねていくしかないことが多いのです。 また、人間の体は機械ではないので、 あるツボに鍼を打てば誰にでも同じ治療効果が現れるというものではありません。 一人一人の症状や体質に沿った治療が必要な理由です。 ですから、当院では、 可能な限りていねいにご説明し、患者さんにご自身の症状を理解していただきます。 そのうえで朱院長と副院長の私のどちらかが治療にあたるようにしています。 当院においても 若い鍼灸師を雇用していた時期があります。 しかし、有資格者とはいえ、 経験の浅い人に実際に患者様の治療を任せることはできませんでした。 これから病院での(西洋医学の)治療を補完するものとして、 鍼灸の重要性がますます高まっていきます。 私ごとですが、 今年は鍼灸大学院に通い始め、 解剖学や生理学など西洋医学の視点も交えて 鍼灸を見つめ直す機会を得たのは大変に有益でした。 こうして学びましたことの数々は、 必ず日々の診療に活き、 皆様方のお役に立てると信じております。 この一年大変お世話になりました。 来年もどうぞよろしくお願い致します。
0 コメント
鍼灸治療というと一般的に肩こり、腰痛などのイメージが強いようですが、
実は多くの神経症状にも効果を発揮します。 当院では18年前の開院以来、顔面神経麻痺の治療に力を入れてきました。 顔面神経麻痺には大きくいって二種類あり、 片側の顔の筋肉がコントロールできなくなるベル麻痺と 耳や耳の穴に水ぶくれ、 かさぶたを伴うハント症候群です。 ベル麻痺は 長いあいだ原因不明といわれてきましたが、 近年の研究によって、 顔面神経に潜伏した単純ヘルペスウィルスが激しい寒さに晒されたり、 過労やストレスに見舞われたりすることで、 異常に増殖して起こるらしいことがわかってきました。 今回はヘルペスウイルスによって 右顔面神経麻痺(ベル麻痺)を起こした症例をご紹介します。 夏から当院に通院中の38歳の女性で、 当初は左眼が完全には閉じず、 笑うことが難しく、 もちろん話もしにくい状態でした。 左耳の裏に痛みあり、 時おり左側の耳に音が異常に大きく聞こえるといいます。 健身院においでになったのは 発症して2週間後のことでした。 病院でステロイド、 メチコパールなどの薬を処方され、 神経的な症状は少し改善されたものの、 麻痺が依然としてひどいので、知り合いから紹介されて当院を訪ねて来られました。 この患者さんの場合、 最近新しい職場に移ったばかりとのことで、 やはりストレスがあったのでしょう、 免疫力が低下して ヘルペスウイルスが増殖したようです。 舌を拝見したところ、 中国医学でいう「舌質赤苔薄黄」が現れ、 「脈浮」「風熱」の症状があるところから、 おそらく気血の流れが悪くなって 顔の筋肉に栄養がいきわたらなくなり、 それが原因で顔面神経麻痺を発症したものだと考えられました。 治療は、顔面に加え、 顔面神経の出所である耳の裏側、手足のツボにも鍼を打つ方針で行ないました。 麻痺の状態を見ながら、 毎回微妙に鍼の打ち方や方向を変えることにしました。 10回の治療(1クール)で7割がた治癒し、 現在は完全回復に向けて通院していただいています。 人の体は人それぞれです。 病院での治療も同じことで、 西洋医学の標準治療やいわゆるツボ療法は、 多くの人たちにプラスの効果を及ぼす一方、 それだけでは充分に効果が現れない、 あるいは却って悪化してしまう方も必ず現れます。 こう処置すればこういう効果が現れると 機械的に決まっているわけではありません。 当院では、 一人一人の状態に応じた 丁寧で個別的な治療に取り組んでいます。 |
カテゴリ
すべて
アーカイブ
1 月 2021
|