「鍼灸」と一言でいいますが、日本と中国とでは実は使う鍼からして違います。
患者の皆様はふだんあまり意識されることはないと思いますが、 今日はそれについてちょっと書いてみます。 まず誰にでもすぐにわかる違いは、 中国鍼(写真)の方が日本の鍼より太く、 鍼を刺した時の刺激が強いということです。 もっとも中国でも細い鍼を使うことはあり、 美容用に使う鍼などは非常に細いのですが、一般的には確かに日本の鍼より太めです。 これは「鍼感」といって、鍼を打ったときの重く響くような感覚を重視するからで、 日本の細い鍼ではこの「鍼感」が希薄です。 私たち中国人の鍼灸師はこの「鍼感」を治療効果のバロメーターとして使うので、 どうしても日本の鍼には物足りなさを感じてしまいます。 日本の患者様には鍼に恐怖感をお持ちになる方もいらっしゃるようで、 そこでいつ刺入したのかよくわからない細い鍼が好まれたという歴史があるのでしょう。 ただ、鍼の太さと痛みの強弱は直接の関係はありません。 太い鍼であろうと皮膚の痛覚を外して打てばそれほど痛みは感じないからです。 中国の鍼を打ったときの特徴は、痛みよりもズーンと響くような「鍼感」の強さです。 日本人の患者様のなかにも、 最近はこうした中国鍼の感覚が好きで効果を実感できるという方が増えてきています。 もっとも、一番重要なのは鍼灸治療に対する日中両国の考え方の違いだと思っています。 日本の鍼灸は法律的にも社会文化的にも医療の補助という位置づけ、 あるいは(科学的根拠が明確ではない)民間療法の一つとしての扱いだと思います。 マッサージ・整体などと同じように、 疲労回復やリフレッシュの手段として考える方も多いのではないでしょうか。 それに対して、中国では鍼灸はあくまで医療の一環であり病気を治す手段だと考えます。 そのため、治療効果を最優先に考えるという習慣が定着しているのです。 西洋医学とともに、役割分担しながら、人々の健康を担う大切な役割を果たしています。 西洋医学に比べて実証的な臨床データの蓄積という意味では確かに遅れは否めません。 しかし、一方で、 「個々の疾病ではなくトータルとしての患者を診る」という点ではかえって現代的で、 総合医療・予防医療という面からも世界的に中国医療の再評価が進んでいます。 私たちは、もちろん日本の法制度の範囲内での話ですが、 今後とも「医療者」の自覚を持ちながら患者様と向き合っていきたいと考えています。
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3月 2023
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