私はいま大学院で
西洋医学の視点も入れながら 鍼灸を見つめ直す研究をしています。 そうしたなか、 先日はうつ病に対する鍼治療の効果について学びました。 WHO(世界保健機関)が うつ病に対する鍼治療の効果を 認めていることは知っていましたし、 当院でも、18年前の開院以来、 現実にうつ病の治療を行なってきています。 しかし、西洋医学のルールに基づく臨床試験が盛んに行われていることは、 今回、大学院での講義で初めて知りました。 当院の治療にも参考になる内容が多くあり、 また患者様に世界レベルの鍼灸研究の 一端を知ってもらう意味でも、 学んだことのほんの一部ではありますが ここに書いてみたいと思います。 世界中の医学的な治験(論文)を網羅した「コクラン共同計画ライブラリー」は、 西洋医学の臨床試験の報告が大半ですが、 なかには鍼灸治療に関する 実証的な研究論文も含まれています。 そのなかに、 比較実験によって うつ病に対する鍼治療の効果を調べた論文が700本以上あるそうです。 例えば、2010年にスミスさん、 マクファースンさんらが発表した論文では、 抗うつ薬と鍼治療を組み合わせると抗うつ薬だけの治療より症状が改善すること、 当院でも行なっている鍼に通電しての治療と 新規抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を組み合わせた場合、 SSRI単独の治療に比べて明らかに症状が改善することなどが報告されています。 西洋医学の薬物療法と 東洋医学の鍼を組み合わせることで、 より高い治療効果を期待できるのです。 また、チャン(張)さんという人の2003年の論文では、 頭頂にある「百会」、 眉間にある「印堂」というツボを中心に、 いくつかの追加的なツボも合わせて電気鍼による治療を行なったところ、 抗うつ薬(SSRI)による治療に比べて症状の軽減に役立ったとされています。 こうした臨床試験による鍼灸効果の研究は まだ充分とは言えないようですが、 うつ病に限らず、 西洋医学と鍼の組み合わせが効果的だとするものが少なくありません。 病院と連携した治療のシステム作りなど 現状では課題も少なくありませんが、 こうした研究成果をできるだけ当院での治療に活用していきたいと考えています。
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3月 2023
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