鍼灸治療というと一般的に肩こり、腰痛などのイメージが強いようですが、
実は多くの神経症状にも効果を発揮します。 当院では18年前の開院以来、顔面神経麻痺の治療に力を入れてきました。 顔面神経麻痺には大きくいって二種類あり、 片側の顔の筋肉がコントロールできなくなるベル麻痺と 耳や耳の穴に水ぶくれ、 かさぶたを伴うハント症候群です。 ベル麻痺は 長いあいだ原因不明といわれてきましたが、 近年の研究によって、 顔面神経に潜伏した単純ヘルペスウィルスが激しい寒さに晒されたり、 過労やストレスに見舞われたりすることで、 異常に増殖して起こるらしいことがわかってきました。 今回はヘルペスウイルスによって 右顔面神経麻痺(ベル麻痺)を起こした症例をご紹介します。 夏から当院に通院中の38歳の女性で、 当初は左眼が完全には閉じず、 笑うことが難しく、 もちろん話もしにくい状態でした。 左耳の裏に痛みあり、 時おり左側の耳に音が異常に大きく聞こえるといいます。 健身院においでになったのは 発症して2週間後のことでした。 病院でステロイド、 メチコパールなどの薬を処方され、 神経的な症状は少し改善されたものの、 麻痺が依然としてひどいので、知り合いから紹介されて当院を訪ねて来られました。 この患者さんの場合、 最近新しい職場に移ったばかりとのことで、 やはりストレスがあったのでしょう、 免疫力が低下して ヘルペスウイルスが増殖したようです。 舌を拝見したところ、 中国医学でいう「舌質赤苔薄黄」が現れ、 「脈浮」「風熱」の症状があるところから、 おそらく気血の流れが悪くなって 顔の筋肉に栄養がいきわたらなくなり、 それが原因で顔面神経麻痺を発症したものだと考えられました。 治療は、顔面に加え、 顔面神経の出所である耳の裏側、手足のツボにも鍼を打つ方針で行ないました。 麻痺の状態を見ながら、 毎回微妙に鍼の打ち方や方向を変えることにしました。 10回の治療(1クール)で7割がた治癒し、 現在は完全回復に向けて通院していただいています。 人の体は人それぞれです。 病院での治療も同じことで、 西洋医学の標準治療やいわゆるツボ療法は、 多くの人たちにプラスの効果を及ぼす一方、 それだけでは充分に効果が現れない、 あるいは却って悪化してしまう方も必ず現れます。 こう処置すればこういう効果が現れると 機械的に決まっているわけではありません。 当院では、 一人一人の状態に応じた 丁寧で個別的な治療に取り組んでいます。
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1 月 2021
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