尿意の切迫感、
わかりやすく云えば 「おしっこが近い」ことに悩んでいる方は、 (特に年配の方を中心に)多くいらっしゃるのではないでしょうか。 専門的には「過活動膀胱」と呼ばれ、 膀胱の知覚が過敏になり、 意に反して収縮することで、 尿意の切迫感を覚える病気です。 症状がひどくなると 我慢できず失禁してしまうこともあります。 日本排尿機能学会が定めた 診療ガイドラインでは、 患者に4つの質問をして 過活動膀胱を診断することになっています。 この質問票を使うことで、 過活動膀胱の自己診断が簡単にできます。 (下のチェックリストをご覧ください。) 質問の3番目にある「急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか?」が 「週に1回以上」(点数で2点)より多く、 4問を合計した点数が3点以上になる場合を過活動膀胱としています。 合計スコアが5点以下は軽症、 6〜11点は中等症、12点以上が重症です。 このガイドラインが作られたのは2005年、 その時点で、 日本では40歳以上の男女の12.4%、 810万人もの人が過活動膀胱の患者だと報告されています。 過活動膀胱の治療法としては 抗コリン剤を使った 薬物療法が広く行われています。 膀胱を収縮させる信号として分泌される アセチルコリンという物質の働きを弱め、 膀胱の収縮を抑えようとするものです。 しかし、 頻尿や尿失禁に対して効果を発揮する一方、 尿意切迫感の改善は充分とは言えません。 さらに強いのどの渇きや便秘、 心拍数増加など副作用も報告されています。 薬物療法以外では、 水分摂取制限など生活指導や、 骨盤底筋体操等の行動療法が用いられます。 こうした西洋医学の療法に 鍼灸を組み合わせると治療効果が上がり、 「生活の質」(QOL)の向上を図ることができます。 1988年のChangさんという方の報告では、 頻尿・尿意切迫感を訴える 女性52人に鍼灸治療を行なった結果、 三陰交というツボを中心とした治療で 85%の患者に症状の改善が確認されたことが報告されています。 また、 明治国際医療大学で行われた臨床実験では、 左右の中髎穴というツボに週一回のペースで鍼治療を行なったところ、 82%に切迫性尿失禁・尿意切迫感の改善が 見られたといいます。 ただし、 同じ明治国際医療大学の調査によれば、 過活動膀胱などの下部尿路症状に対して 鍼灸治療を考慮する人の割合は、 わずか1%にも満たないそうです。 この数字は、 専門医に相談すると答えた人(20%)や、 市販薬を服用するとした人(1.6%)の数より少ないのです。 鍼灸が尿意の切迫感や 尿失禁に効果を発揮することが 一般の方には知られていないという結果で、 鍼灸師の一人として大変残念に思います。 鍼灸の効果は 肩こりや腰痛に留まるものではありません。 これからはもっともっとPRしていかないといけませんね。
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3月 2023
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