私たちのように中国の医療機関で働いた経験を持つ鍼灸師は、
日本の鍼灸が置かれたポジションにちょっとした戸惑いを感じることがあります。 中国では鍼灸は「医療」としてきちんと位置づけられていますが、 日本ではそこが大変あいまいです。 基本的には「医療ではない」ということで、 厳密にいえば 「治療」という言葉も使えないようです。 私が不満を感じるのは、 そうした鍼灸師の「地位」の問題よりも、 そのため患者様のために必要な病院との連携がなかなか進まないことです。 例えば、中国であれば、鍼灸師が診断に必要と判断するときは、 病院にあるCTやMRI等の検査機器を使うことができます。 しかし、日本では、 鍼灸科を併設している一部の病院を除き、 なかなかそういうわけにはいきません。 私たちが病院の先生に紹介状を書いて検査をしていただくというのは事実上難しく、 また病院から紹介状を持った患者様がおいでになることもごく稀です。 病院の先生たちのなかには、 鍼灸を迷信のように考えていらっしゃる方もおいでなのかもしれません。 当院のホームページにある「鍼灸治療一覧」を見ていただくとお解りいただけるように、 当院では多くの疾患に関して鍼灸と西洋医学の薬物療法等との併用をお勧めしています。 どちらか単独の治療より効果が上がることが多いからです。 また、西洋医学は客観的なデータ重視で実証性を大切にします。 それはもちろん大切なことですが、現実にはデータに現れない異常というのもあります。 器質的な問題がないのに患者様が苦痛や不調を訴えるケースが珍しくないのです。 こうしたケースに関しては、 西洋医学は「不定愁訴」で片づけがちで、 患者様の苦痛を取り除くための充分な治療が行なわれないこともしばしばです。 その点、鍼灸は、こうした症状を改善し、 患者様の苦痛を取り除くことができます。 ですから、どちらが優れているかではなく、 お互いに得意な分野を生かして補いあうのが患者様にとって一番いいと思っています。 しかし、現実には「壁」があって、なかなかスムーズには進みません。 私たち中国出身の鍼灸師が、日頃から非常に残念に思っているところです。
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3月 2023
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